―数日前―

『今度、ちゃんと紹介すんね!』

『うん!』

私と愛斗は笑い合う。

『じゃあ、また』

『おう!』

手を振り合ってサヨナラした後、愛斗は教室へ向かう。

そこで、女子たちのヒソヒソ声が聞こえた。

『あれ、一年だよね?』

『そー。一年の志水って子』

愛斗は敏感に反応して、足を止めて耳を澄ます。

『??』

声をたどると、教室の斜め前にあるトイレの前から聞こえていた。

『最近よく見るよね』

『うん。天瀬と仲いいらしいよー』

『マジで?!ありえないんですけどー』

『あれじゃない?天瀬狙って、二年シメちゃおうとか企んでるんじゃ…』

『こわーい。てか、無理無理。あの天瀬を落とせるわけないじゃん。カッコいいし、何て言うか…』

『違う違う!!それが、天瀬の方も満更でもないっぽいって噂だよ!』

『うそー?!』

『次来たら、ちょっとシメる?』

『そうしよっ。二年の怖さ、思い知らせてやんないと』

勝手な噂で盛り上がる女子生徒たち。

『……』

それを聞いた愛斗は、前髪を掻き上げて眉を顰ませた。

そして、次の日からあいつを避けだした。

愛斗は自分のせいで友達を傷つけるのは嫌だった…。

大切にしたかった…。

ただ、どうやって大切にしたらいいかわからず、今の自分には“避ける”ことが一番いい方法だと思っていた。

どんなに辛くても、自分さえ我慢すればあいつは助かる…。

そう言い聞かせて、耐え続けた。

今までは退屈な日々だった。

でも、それを抜け出させてくれたのはあいつだった。

あいつといると、明るくなれる。

大嫌いな学校も、行こうと思えたのだ。