そういえば、家族でも孤立してたな。

私はボロボロの狭い家の中で立ち尽くす。

小さい頃は何かと可愛がられた。

でも弟たちが生まれて、私の居場所はどんどん消えていった。

私の下には、弟・妹がいた。

「……」

小さい頃の私は、家中を走り回る。

そんな様子を遠目で見る私の体をすり抜けて、みんなは外へ行く。

『こっちだよ~』

『待て~!!』

楽しそうに遊ぶ子供たち。

親は共働き。

もちろん、私たちを構う時間などなかった。

それでも、みんなの時間を作っては旅行に出掛けたりした。

あの時は…楽しかったな。

私が10歳になる頃、一軒家に引っ越しした。

それを境に、色々なことが変わっていった。

弟が野球を始め、才能を見せ始めると、親は必死で弟に金も時間もつぎ込んだ。

妹は家事でも何でもできるようになって、親から褒められていた。

私は何もできなくて、捻くれることもできなくて、親からも兄弟からも構ってもらえなくなった。

親は忙しくなって、家事もせずに仕事に明け暮れた。

べつに寂しかったわけじゃない…。

でも、バラバラになっていくのを感じていた。

休日の朝、目を覚ましても誰もいない…。

そんな日々が当たり前になるのが嫌だった。

家でも孤立するのが嫌だった。

でも、止めることもできずに、ただ立ち尽くしていた。

『……』

幼い私は寝巻きで人形片手に闇の中、ボーっと立ち尽くす。

暗い闇が、幼い私を飲み込もうとしていた。

「待って!!」

私は必死で叫んだ。

走って走って手を伸ばしても、小さな私には届かない。

『……』

幼い私は静かにゆっくり振り返って私を見た。

黒い黒い冷めた目で…。

「だめっ!!!」

私は必死で叫んで手を伸ばすが、私も幼い私と一緒に暗い闇の中に飲み込まれていった。