僕のアメ♪

― 2 - B ―

ガラ――ッ。

「おはよーございまーす」

愛斗と蓮太は教室の扉を開けて入ると、先生に棒読みしながら挨拶した。

「お、おはよう…;;」

先生は少し怖がっているようにも見えた。

生徒たちも愛斗たちを凝視して、囁き合う。

「……」

学校では眼鏡を掛けている翔は肘をついて、ノートを取っていた。

「おはよ!翔」

蓮太はみんなをお構いなしに、翔に笑顔で挨拶した。

「おはよう。…早く席についた方がいい。授業中だから」

翔は手を休めることなく言った。

「うん!」

蓮太は笑顔で返事すると、ルンルンで自分の席に座った。

「……」

「……」

愛斗は翔と目が合っても話し掛けることなく、翔の後ろの席に座った。

そして、何事も無かったかのように授業が始まる。

愛斗は机に何も出さず、ただジッと黒板を見ていた。

先生は物凄い威圧感を感じているだろう…。

「…休むんじゃ無かったのか?」

翔は愛斗に小声で話し掛けた。

「そーしようと思ったけど、美桜を一人で行かせるのも…な」

愛斗は座ったまま机に体を寝かせて、顎を上げて半眼で言った。

「随分優しいんだな」

「あいつ、意外に寂しがり屋だから」

愛斗は笑って言う。

「…へぇ」

翔は表情を変えず、ノートを取りながら言う。

「あんな奴、久しぶりに見た。不器用で、どっか捻くれてるんだけど、どっか真っ直ぐで…ほんと、馬鹿正直で…」

愛斗の表情が柔らかくなっていく。

「へぇー…」

翔は手を止めて、椅子の背もたれに体を預けた。

「我儘にみえるけど、実は結構我慢してたり、自分より他人を優先できる奴なんだ。…だから、守ってあげたんだ」

愛斗の言葉に、翔は溜息ついた。

「あいつ、馬鹿だからな。…まあ、馬鹿ならあそこにも居るんだけどなw」

そう言って翔が見たのは、蓮太。

蓮太は授業中にも関わらず、周りの人に話し掛けてチョッカイ出していた。

周りの生徒はいささか楽しそうで、笑顔だった。

「こら七森。授業中だ。静かにしなさい」

先生からの怒声で、蓮太はシュンとなった。

「うん…(´・ω・`)ショボーン」

蓮太の落ち込んだ顔を見て、教室中は笑いに包まれる。

誰からも愛される性格とは、こういう人を言うんだろう。

「後で構ってやるから元気だせ」

「蓮くん可愛いー」

「そんな落ち込むなー!今日の昼、ジュースおごってあげるよ」

周りの温かい声が、蓮太を包む。

「マジで?!ありがと、いけうっち~!」

蓮太はジュースを奢ると約束した池内大輝に抱きついた。

「こ、こら。やめんか!;」

池内は嫌がったが、蓮太は離れなかった。

「アハハハww」

「男同士で何やってんのwww」

「こら!!七森、池内!」

「何で俺まで?!;;」

また教室中が笑いに包まれて、先生は困り果てて溜息まじりに笑う。

「だなw」

愛斗は翔に笑いかけた。

「…あぁ」

翔は愛斗に少し頬を緩ませて答えた。