僕のアメ♪

「……わりぃ」

愛斗は臣の胸倉を離した。

臣は地面に尻餅ついて、腰が抜けたように色を無くしていた。

「大丈夫か?」

愛斗は私と目も合わせず、私の体を縛っていた縄を解いた。

「うん…」

私は縛られていた腕の、縄の跡を触りながら愛斗を見つめた。

「美桜、俺……」

「何でだ!」

愛斗の声を遮るように、臣は声を上げた。

「??」

「何で…お前は…」

悔しそうに涙目で顔を歪める臣は、行き場のない怒りを地面にぶつけた。。

「……」

そんな臣を見て、愛斗はゆっくり近寄って、

「ごめん!!」

と頭を下げた。

「!?」

臣は目を見開いた。

「お前が俺を憎むのも分かる。俺はそれだけのことをしてきた…。でも、関係のない奴まで巻き込むのはやめてくれ。俺はもう…大事なものを失いたくない。喧嘩なら、俺が全部受ける。だから…だから、頼む!!…決めたんだ。守るって…」

愛斗は歯を食いしばって、ひたすら頼み込んだ。

「……」

周りは静まり返って、しばらくの間ただ騒然としていた。

「…お前を、許すことは出来ない」

臣はゆっくり立ち上がって、愛斗を見つめて言った。

「……」

愛斗は悲しい表情を浮かべる。

「でも…あいつに免じて今後一切、お前らに手ェ出さないと誓う」

臣は私を見て、少し柔らかくなった表情で言った。

「??」

私は首を傾げる。

「変わったんだな…。俺も、変わらないとな」

臣は愛斗の肩を優しくポンッと叩くと、その場から去って行った。

「ぁ…。あ、ありがと!!」

愛斗はあまりの驚きに戸惑いながらも、礼を言った。

「…良かったぁぁ」

私はそう言うと同時に、全身の力が抜けていくのを感じた。

「ごめん。大丈夫だった?」

愛斗は私に駆け寄って、肩を掴んで立たせてくれた。

「大丈夫。私より愛斗は…」

「あぁ。大丈夫だよ」

愛斗は優しく微笑んだ。

私は…その時気付いた…。

彼のこの笑顔は…ウソだと。