1年に1度回ってくる、7月7日
織姫と彦星が逢うことができる唯一の日


『…台風9号の接近により、沖縄では昼から、本州では夕方から激しい雷雨を伴います。外出には十分にお気をつけて。せっかくの七夕ですが、本日は日本全国雲に覆われることとなるでしょう』

プツン

ピンク色の涼しげなチュニックを着たお天気お姉さんが笑顔のまま暗い画面の中へと消えていった
それを何の感慨も無さげに頬杖を突きながら見る女が一人

「はぁ~…人間界は曇りかぁ」

日本では織姫と呼ばれている星の精霊…ベガだった

「ベガ様?そんなにアルタイル様に逢えないことが寂しいのですか?」
ベガの仕事仲間のシェリアクが珍しいとでも言いたげに問いかけた

そうというのも、普段のベガは子供たちの夢を壊しかねないぐらいの超現実主義者だからだ
ロマンがあったら金を出せとでもそのうち言うかもしれないほどだ

「いや、別にアルにはいつでも会えるし
人間界に伝わるおとぎ話なんて脚色加えまくってどれだけドラマチックにできるかが勝負でしょ
8割以上嘘ばっかりに決まってるじゃない」

あなたも知っているでしょ?とでも言いたげに彼女は目線を彼に向ける

「いや、今日会うことに意味があるのでは…?」

シェリアクがぼそりとつぶやくと、それを聞き取ったベガはバンと机に両手をついて立ち上がった


「そうよ!私たちが今日会う事に意味があるの!!
なのに曇り!雨!台風!!
せっかくの1年で一番儲かる日が!七夕需要でがっぽり計画が!
てんでダメになってしまうじゃないのぉぉぉ~…」

頭を抱えるベガを見て

「ですよねー、ベガ様ですもんねー…」と冷めた目で見つめるシェリアクがいた