泉と出会ったのもこの海岸だった。



俺はいつものように自転車を漕ぎながら家に帰ろうとしていたときだった。
独りの女性が暗い海岸で座り込んでいるのが見えた。


俺は自転車から降り、その女性の方へ近寄った。



「あの、危ないですよ」


「…え?」



その女性が振り返ると驚いた顔をした。



「独りで海岸にいるのは危険なんで声をかけただけです。迷惑ですみません」


「…いえ、ご心配おかけして申し訳ないです」



暗くてよく見えないが美人であった。
そして、少し声が震えているように思えた。
泣いていたのか…?



「港町の方ですか?」


「港町…?」


「本当の名前は違うんですけど地元の人は皆そう呼んでるんです」

「へぇ…素敵な町ですね」


「もしかして東京の方ですか?」


「はい。一人旅してたんです」


「一人旅ですか?」


「東京って凄い街だけど、たまにこうやって自然に触れたくなるんですよね…」



女性は遠くを見つめながら言った。
どこか悲し気に感じられた。