典子は仕事をしていないので、
付き合いは少ないのだが、
数年前から
「フラワーアレンジメント教室」
に月に二度通っていた。

そこに先月新しく入ってきた
生徒だ。

はっきり年齢を尋ねたことは
ないが、多分沙耶と同じか
少し上くらいのはずだ。

『今度、機会があったら
話しかけてみようかな‥。』

何となく、そんな事を
思っていた。

結局、今夜は由香里のストレス
発散会になり、亜由美と典子は
ひたすら由香里の愚痴を聞いて
あげることになった。

 いつもではないが、たまには
こういうこともある。

それはそれでそれなりに
楽しいのである。

 三時間くらいして、かなり
お酒の量が多くなっていた
由香里が、

「私、悪いけど今夜はちょっと
飲みすぎたみたいだから
お先に失礼するわ。
二人はどうする?」

 由香里は、去年麻布に買った
『2+SLDK』
のマンションに住んでいる。

 すると亜由美が

「もういい時間だし。
私達も帰るよ、ねぇ、典子。」

 典子は

「うん。じゃあ、出ようよ。」

「今夜は私が払うから!」

「いいよぉ、割り勘にしようよ。」

「ダメ!今夜は私が払います。」

「いいってば!」

そう言うと亜由美が、バン!と
一万円札を出して

「ダメっていったらダメ!」

と、由香里を睨み付けた。

典子も財布からお金を
取り出すと亜由美がさえぎって

「いいから。」

結局、由香里と亜由美が
半分ずつ支払った。

典子は仕方なく店を出て
由香里のためにタクシーを拾った。