それに、MFのエースと呼ばれてる樋野くんならば、そんなゴールとか、パスの相手を通過することはあっても、他所【よそ】に間違えて蹴ってしまうなんて、初歩的なミスはしないだろう。
それに、そんなにコントロールがないはずがない。
そんなことにも気付かないなんて。
…でも、つまり、樋野くんはわざと…?
「全く、油断も隙もない」
なんて、樋野くんは言う。
「いや、でも…」
「何、まだ何かある?」
「つまり…」
「ああ、そうだよ。
俺はアンタが、…松雪が好きだ」
ぶっきら棒に、でも、優しく。
いつものように、優しく言ってくれて。