「……や、やだなあ…そんな…」

「知らねえだろ、アンタ、意外とウチのコースで人気があるの」

「え」

「運動部の、しかも男子が多いから、よく写真を撮りに行っててアンタを知ってるやつが多いんだ」






『だから俺は、アンタを知ってたんだよ』と。

樋野くんはそう言った。






「え、っと…」

「だから、誰かに取られねえうちに、関係を持ちたかったんだ」

「…関係?」

「俺が、監督と與に頼んだんだ。『今回のインターハイの写真は、業者に頼むんじゃなくて、松雪 李南にしてくれ』ってな」

「…うそ」

「だから、あの中庭で出会ったのも、偶然じゃない」

「……」






そう言われてみれば、初めて出会ったあの日。



私の元に転がってきたサッカーボール。

思いっきり蹴った感じじゃなかった。



それが意図的に転がされてきたということには気付かなかったけれど。