「…でも、樋野くんのお陰で助かった。ありがとうね」
それに気づいてはいても、知らぬフリをして、私は樋野くんにそう言う。
でも、
「何、アイツらとなんかあったの?」
やっぱり樋野くんはそのことが気になるようで。
「…うん、まあね」
「その内容は、教えてくれない訳?」
「…『写真なんか、どうでもいい』んだって」
「…は?」
「写真部に入っておいて、それはないよね」
どうしてだか、樋野くんも怒りの表情で。
…私だって、不快感を覚えたんだから、樋野くんだってそう思うよね。
「あの時。私はカメラが本当になくなったら、死んじゃいそうな勢いだったけど、彼らはそうじゃないんだよ」
写真に対して、そう言った感情とまではいかない人もいるかもしれない。
ただ、写真が好き。
景色を映すことが好き。
そう言っただけでもいいと思うんだ、私も。
逆に言えば、興味を持ってくれること。
それだけで嬉しいの。
でもああ言ったことを私みたいな、本格的に好きな人に対して言うのは、間違っていると思うんだ。
だってあれは、―――写真家を侮辱する言葉。