そりゃそうだ。

樋野くんは、校内でも有名だし、学年問わず告白回数だって多いと聞く。
それに持って行ってサッカー部のMF。


モテないはずがない。

けど、固まっていたのは女子だけならぬ、男子もだった。

…男子も衝撃的だったのかな。

そんなことを思っていたら、腕を掴む手も緩んでいたから、振り払った。
そして、樋野くんの後ろに隠れて。




「…っ、松雪…」

「明日付けで、退部届を提出いたしますので。……今まで、お世話になりました」




そう言って、深々とお辞儀をする。
そして歩み出しても、彼らが追ってくることはなかった。



それは、
―――樋野くんのあの嘘のお陰なのか、はたまた、多くの生徒に知られてしまった恥ずかしさからなのか。

それは、私にもわからない。