もしもこのとき、樋野くんが半信半疑だったならば、どうにか誤魔化せたかもしれない。
けれど、もう分かっていたみたいだから。

感じていたみたいだから、何も言い様がなかった。


樋野くんはどうしてわかってしまうの。
わからないふりをしていてくれたらよかったのに。

でも樋野くんはやっぱり優しくて。




「…何か、あったんだろう?」



と。
問い詰めるように言っていたのに、急に優しくなって。
そんな言い方されたら、


「…っ、あのね―――」



言ってしまうよ。