すると、


「どこ行ってんだよ」



腕を引っ張られて、私は振り向いた。

そこには、



「樋野くん!」




迷子の私の救世主、樋野くんが現れた。

『遅いよ』なんて言ってみると、




「高2で『迷子の迷子の松雪はー、困ってしまってワンワンワワーン、ワンワンワワーン』なんて歌ってるやつを助けようかどうか迷ったんだよ」





とか、超真面目顔で言われてしまった。




「うわ、酷い!助けてくれたっていいのに」

「いや、遠慮しとくわ」

「酷いー!」




私はそう言いながらも、助けてくれた樋野くんに心の中で素直にお礼を言っておいた。