「おねーさん、どうしたの?」 マンションへ帰って来たあたしを彼は驚いた表情で迎えた。 「はっ……くしゅっ!」 風邪を引いたのかもしれない。 雨の中を走ってきたのだから当たり前といえば当たり前なのだけれど。 本当はタクシーで帰れればよかったのだけれど、何しろ持ち金全てを母親の元に叩き付けてしまったので徒歩で帰るしかなかった。 「しゃ……シャワー浴びてくる」 「駄目だよ、寝てないと」 浴室へと向かおうとするあたしを彼が慌てて呼び止める。