CINDERELLA STORY~貴方に巡り会えた奇跡~

そう思った私は運転している男の顔を見てみると、口元に笑みを浮かべる訳でもなく、桜井蒼紫は黙ったまま運転してくれていたのだった

その後も、コンサート会場に到着するまで彼は何も聞いて来なかったから、私は流れる景色を見ながら黙り込んでいた

そして2日目のコンサートが開演すると、私は篤人の事を忘れるように3時間に渡って歌を唄ったのだった


「RURIさん
 今日も花束が届いてますが、楽屋にお運びしても宜しいでしょうか?」

「あっ、はい
 お願いします!!」


マッサージを受け終わり、ちょっとズレを感じたサックス奏者のバンクスと話し合っている時、昨日の警備員の男の人が話しかけてきたので、私は笑顔で警備員に答えた


【ここは、もっとアップテンポにした方が良いって言ってるだろ?】

【だからって、急にアップテンポにするなら、打ち合わせの時に言ってくれないとサックスだけが突っ走って、伴奏者達とダンスのズレが出たって言ってるじゃん!!
 バンクスが勝手に独走したら、コンサートが台無しになるって言ってるの!!】

【なら、もう一度聞いてみて良かったらアップテンポに変更で良いよな?
 皆も聴いてみてくれ!!】


バンクスは、自己主張の強い人間だ

コンサートの状況で、勝手にアレンジを加えたりするのがお得意で、私は勿論の事ながらバックダンサーや、伴奏している人達も振り回される事が多い

でも腕は一流のサックス奏者であるし、彼の感性は誰でも認めざる得ない部分がある

確かに、バンクスの言う通りアップテンポにした曲は唄いやすかったのも事実だが、周囲の伴奏者とダンスにファンには分からなかったかもしれないが、ズレが出てしまったのだ

念入りにリハーサルを行い、最高のステージになるように努力してきたスタッフ達

それなのに急遽リハと違う事をするとなると、アメリカからのスタッフはこの状況には慣れてるが、日本のバックダンサーや数人ではあるが演奏者からは、リハ通りにして欲しいとの声も上がっている

新しいのもを取り入れる向上心

それは無くてはならないもので、私はバンクスの向上心が好きで、いつもワクワクさせられている

しかし、明日はコンサート最終日

バックダンサーや演奏者にも疲労が出ている状況だ

例え一曲だけの変更だとしても、勘弁して欲しいっと日本のスタッフから注文されたが、バンクスは譲ろうとはしない

そしてバンクスが演奏を始めると、アメリカの私の専属の演奏者達はバンクスのノリに一緒に演奏を始め、またアメリカのバックダンサーも踊り出したのだった


【どっちが良い?
 今の方が、絶対に良かっただろ?】

【確かに、今の方が良かったし唄いやすいよ
 私の最大の武器である高音も出しやすいね!!】

【だろう?
 なら、これで決めようぜ!!】


私は、ついバンクス達の演奏で歌を唄ってしまった

何だかシックリこなかった曲が、バンクスのアレンジのお蔭で高音の伸びも違うし、凄く唄いやすかった


【もし、日本の伴奏者とダンスが無理なら俺達だけでやれば良いじゃん!!】

【そうだよなぁ~
 俺達ダンスチームも、この方がノリがあって踊りやすいしな!!】


アメリカ側のスタッフは勝手に話を進めて話し合っている中、私は日本側のスタッフに詳細を説明をすると、誰もが最高のステージを作りたいと思ってくれたみたいで、ダンス部門と演奏部門に分かれて練習をする事になったのだった

勿論、私は両サイドでの練習に参加する事になったけど、たった1曲かもしれないが、その1曲がステージを更に最高のものとなる事を私は知ってるし、スタッフだって1曲の大切さを知ってる

だから、たった1曲のアレンジの変更に熱くなるのだ