一瞬、焦った

でも悟られるなんて、まさか私が初体験したって事までカメラで分かるの?

それとも篤人の残した痕跡が見えたとか?

私は着ていたパーカーで首元を隠すようにホテルの部屋に急いだのだった

ヤバい

ヤバいよ

そんな心境を抱えながらホテルの部屋に帰ると、スタイリストによって消してもらった篤人の痕跡を鏡の前で確認すると、赤い印は上手に隠れていて私ですら分からない

なら、何で桜井蒼紫は私を女になったなんて言ったんだろう?

分からない

どう考えても、私には分からない

でも相手は世界的に有名なカメラマン

ちょっとした変化に気が付く事もある

私の知らない変化‥‥

それが何を示すかは分からないけど、彼の言葉には用心しなければって思った


【RURI
 そろそろ撮影現場に向かうけど、準備は出来てる?】

【うん‥‥
 ねぇ~、ジェニファー
 桜井がジムに現れたんだけど、私が女になっただろうって言ってきたの
 そう言うのって、やっぱりバレたりするものなの?】

【女に?
 そう‥‥、そんな事を言われたのね
 でも、最近までのRURIは一言で言うなら子供って顔してたわよ
 どこか、あどけなさが残る少女って感じで、だからつい子供扱いしちゃうんだけど、それは日本人だからって言う部分もあったんだと思うわ
 日本人って、童顔じゃない
 だけど今のあなたは、愛される喜びを知った女性の顔してるわよ!!】


愛される喜びをしった女性の顔?

ジェニファーに言われ、私は急激に恥ずかしさが込み上げて来て赤面してしまった


【RURIも大人になったって事ね♪
 綺麗になったわ♪
 お肌も艶々してるし、愛に満たされた顔をしてる
 私は今のRURIの顔の方が魅力的よ♪
 きっと、篤人に素敵な抱かれ方をし‥【分かった‥‥
 分かったから、もう言わないで!!】


ストップ!!

ストップだ!!

私はこれ以上は聞きたくないとばかりにジェニファーの言葉を遮り、彼女の口を塞ぐように手で押さえると、恥ずかしさから逃げるようにホテルの部屋を出たのだった

部屋を出た瞬間、私にとっては仕事のスイッチが入った瞬間でもある

そんな私をキムさんとミヨンさん、桜井蒼紫や私のホテルの部屋に入れなかったスタッフが廊下で待ち構えていた

完全に仕事モードの私

長いスィートルームの廊下を優雅に歩く私に見とれるスタッフやキムさん親娘を他所に、桜井は私の姿をカメラに収めようと何度もカメラのシャッターを切っている音が聞こえていた

ホテル前に停車させてるリムジン

そこから離れた場所には、待ち構えてるメディアやパパラッチの姿と一緒になってファンがプレートを掲げて黄色い声を上げている