1時間目が始まる。


よりにもよって一番嫌いな数学。


公式ってなんですか。


Xってなんですか。


分かんないよー!


一人脳内でバカやってたら、隣から手紙が。


パッと横を見たら佐山くんと目が合う。


指で何か指してる。


手紙、読めって事かな。


不器用に切られた手紙を開く。


【昨日、あれから大丈夫だったか?】


心配、してくれたんだ。


それだけで嬉しかった。


あれ。なんで今嬉しかったんだろ。


別に佐山くんが心配してくれたからって嬉しがる事はないよね。


やっぱりおかしいのかな。


【大丈夫、ただの貧血だよ!】


と出来るだけ明るく書いた。


きっと返事は来ないだろう。


授業に集中しようと前を向く。


視界に手が入ってきた。


左側から。


まさか、返事くれるなんて。


絶対に終わらせると思ったのに。


【良かった。】


たった一言。


それだけで良かった。


私には充分だった。


つい、笑みがこぼれた。