大きなため息をこぼす。

あの夏祭りの日に、じゅなに言った言葉を思い出す。

りんごあめを上機嫌に舐めながら、龍星に満面の笑顔で

"お店、探してくれてありがとね!"

って言ったじゅなに、

"見つけたの俺なんですけど?"

って、冷たく言ってしまった事…。

"ありがとう"

って言ってくれたじゅなに、

"あからさまに付け足してんじゃねーよ"

そう言ってじゅなを不安にさせてしまった事…。

"俺には見せた事ない表情で龍星の事見てんじゃん"

"ずっとじゅなの事見てきた俺には分かるから"

…自分の言った言葉を思い出すと、嫉妬ばかりで情けねぇー。

ほんとにガキだ…俺…。

「空」

オカンに呼ばれて背もたれの方に向けていた顔を天井に向けると、オカンは俺を見下ろしていた。

俺のすぐ横で、床に座っている。

「なんだよ?」

見下ろすオカンを冷めた目で見る。

そんな俺を見て、オカンはニッと笑った。

「明日ね、拓海君、帰って来るんだよ!」

そう言うと、オカンは自分のケータイの画面を俺に見せた。

【明日の夕方、日本に着くぞー!久々に楓ちゃんと可愛い可愛い大好きな空に会えるのが楽しみだぞー!空、元気か?ちゃんとご飯食べてる?背伸びた?彼女出来た?あー早く帰りてぇー!空の友達のりゅう君にも早く会いたいなー!明日また連絡するから迎えに来てね♪】

オカンが見せてくれた一件のメール。

本文にはそう書かれていた。

送り主はオトンだ。

相変わらずアホ丸出しの文章…。

「アホだ」

思わず、笑ってしまった。

「良かった。笑ってくれた」

オカンが俺の頬を指で押す。

安心したかのように表情を緩めて笑っている。

「やめろ」

「空、ここ何日か元気なかったから、ママ心配してたの」

オカンの手を払うと、オカンは苦笑いを浮かべた。

やっぱりオカンは俺の事、よく見てたんだ…。