ほんとの笑顔が見たかったんだ

そんな時、私は聞きたかった事を思い出した。

「そう言えば、龍星君はどうしてあの時、駅にいたの?」

歩いている時に聞けば良かったんだろうけど、足が痛くて、いや…それ以上に心臓がおかしくて聞けなかった事だ。

龍星君は、一瞬“なんの事だっけ?”という様子で目を丸くした。

だけど、ちゃんと思い出したみたいで、“あー、あの時か”と独り言を言うみたいに呟くと、“ははっ”と、笑った。

「俺さ、いつもみたいに公園にいたんだけどさ、なんか、誰かがすげー速さで走ってる足音が聴こえてさ、振り返ったらじゅなちゃんだったんだよ。でさ…あんなに慌てて大丈夫かなーって思って…。気付いたら追いかけてた!」

無邪気に笑う龍星君の笑顔を見ると、恥ずかしくなった。

どうしよ…。

私、超必死だったんだけど…。

っていうか…それって…ずっと見てたって事!?

「も、もしかして…コンクリートにダイブしたの…見てた?」

恐る恐る聞いてみた。

あの場面だけは絶対に見られたくないんだけど…。

「うん」

私の願いは届かず、龍星君は真顔でそう言った。

最悪だっ!!

「ほんとに?…やだ…恥ずかしい…」

これ以上恥ずかしい事はないよ…。

私は両手で自分の顔を隠した。

でもね、私、ちょっと期待してたの。

“大丈夫だってー!俺、全然気にしてないし!”

っていう風に言って、龍星君は笑い飛ばしてくれるんじゃないかって。

でも、それは違ってたみたいで…。

「あー…ごめん…追いかけたりして…。」

両手を下げると、龍星君は今まで見せなかった表情を浮かべていた。