東京タワーももう「一昔」なんだなあと思う。スカイツリーがOOメートルに達しました、というニュースを聞くたびに。

映画とドラマの「東京タワー」(リリー・フランキー)はどちらも観た。大泉洋は最後の方なんかリリー・フランキーにしか見えなかった。田中裕子は私が一番好きな女優の一人。樹木希林もその若かりし頃を演じた実のお嬢さんの内田也哉子も良かった。大学を中退した、という息子に「なんで頑張れなかったかねえ?」と責めるでもない、問いかけるでもない、自分に言い聞かせるような疑問文が印象的。

田中裕子といえば彼女は向田邦子のドラマによく出演するしよく似合う女優さんだと思う。初めて買った料理の本は向田邦子の「うの引き出し」とかなんとかいう料理本だった。

その年の夏に私はアルバイトでキャンプ場へ行っていて、その宿でよく出てきたサツマイモのオレンジ煮がとても気に入った。どうやって作るんだろう?作ってみたい、とその時は思っていたのだけれどそれっきり忘れていたのに、ある本屋でその向田邦子の料理の本を見つけてそこに「さつまいものレモン煮」のレシピが載っていたので買う事にしたのだった。オレンジがレモンかはそれほど大きな問題じゃない。その本屋さんは彼の家に近いK市の駅ビルか駅に近いどこかのビルの上階にあったと記憶している。美味しいインドカレー屋さんが近くにあって、彼が連れていってくれたのだった。その頃の私達にとって「インドカレー」は手の届くお洒落なグルメだった。

髪を短く切って、首筋がすぅすぅした。すぅすぅするなあと思って歩いていたら、「首が前に出ている」と彼に言われた。
それから、それより前に一度「勝手にどこかへ行くな」と言われたことがあって、その本屋で「文庫本を見てきていい?」「雑誌の所に行くね」といちいち断ってウロウロしていたのを覚えている。

人間て、くだらない事をたくさん覚えているものだ。