そのことがきっかけになって、俺達は母と佐伯真実幹部の結婚式を密かに画策していた。


俺達の結婚式は十二月二十五日。
俺の十八歳の誕生日だ。

その為師走に入るとすぐに結納が交わされる事になった。

十二月八日。
それは師走の事始めの日だった。

事納めだとも言われ、豆腐に折れた針を刺す針供養はこの日に行われる。


十二月十三日を事始めとしている地方もあるが、俺達は八日を選んだのだった。


形式は祖父母を立てて、古式ゆかしく。
でも式は……
病院を抜け出して行ったあの協会で、と言うことにした。


一度……
結婚の契りを神に誓ったあの協会を選んだ理由は、本当は其処では挙式しなくても良いからだった。

俺達はあの白い部屋で、若林結子と佐伯真実だけに見届けてもらえれば良かったのだ。


そこで、悪知恵を働かせた。


でもその日はクリスマス。
幾ら何でも行事を辞めて結婚式にしてくれなんて言えない。

って言うことにしたのだった。

俺達はそれを言い出すタイミングをはかっていた。




 「今日は真珠湾攻撃の日だったわ」
十二月八日の結納終了後、突然祖母が言った。


「パールハーバー?」
宇都宮まことが呟いた。


「えっ? 事始めの日に、戦争も始まったのか……」

俺は知らなかったんだ。
東京大空襲や、広島長崎の原爆。
日本を恐怖の渦に巻き込んでいった大東亜戦争の開戦が今日だったと言うことを。


(今日はパールハーバーの開戦日か。でもこの仕事始めの日に何とかしたいか)

そう、俺は又きっかけを模索し始めていた。


そこで……
又無い知恵を働かせる。


リハーサルを挙げて貰う事にしたんだ。

その場に見届け人として出席して欲しいと頼んだのだった。
勿論祖母にも。
それは祖母にウェディングドレス姿を見てもらいたいと言う、宇都宮まことの希望でもあったのだ。

俺達が本当に挙式する予定の、あの白い部屋を見せたくなかったのだ。


祖母は有事対策頭脳集団の若い幹部候補生達が起こしたら事件の全容を知らないでいたからだ。

宇都宮まことも俺も事件が全て解決されたとは思っていなかったのだ。