(眞樹は小松成美を母として認めるだろうか?)

これから彼はオカルト教団のトップになり、益々暗黒の世界へと入って行くことだろう。

彼の荒みきった心に本当の意味の安息が訪れる日まで、ゲームは終わらない気がした。

俺はきっと、兄弟に苦痛を与え続けた父を許すことが出来ないだろう。
それが唯一俺と眞樹の架け橋となるのかも知れない。
俺は眞樹がどんなゲームを仕掛けてきたとしても、正々堂々戦うつもりでいる。

いつか本当の兄弟として、互いに認めるあえる日が来ることを信じながら……




 小松成実は自分の卵巣と子宮を奪った氷室博士教授と、教団の関係者を恨んではいないと言った。

女性機能が失われ、ホルモンが低下すると骨粗鬆症になり、骨が脆くなる。

でもそれは子宮癌だと云われた時点で解っていた事だと言う。

だからその対策を常に頭に入れて行動して来たと言った。


男の俺にはエストロゲンがどうのこうの言われてもチンプンカンプンだったが。

女性ホルモンの事だと言われ納得した。


悪魔の仕業だと思う実験。

でもそれは氷室博士教授の気持ちを知りながら、他の男性と結婚してしまった自分にも非があると言った。


だから誰にも負担に思って欲しくなかったのだった。

そのための、毎日毎日栄養補給。

ビタミンD・Kカルシウム。


骨粗鬆症に良いとされている事は全てを積極的に取り入れた。
特に大切なビタミンDは干し椎茸に太陽光を浴びせると増やせるそうだ。
今の干し椎茸は殆どが電機乾燥なのだとも言っていた。


それらのことを実施した結果。
今では普通の人より骨密度は高いと言う。

俺はそれを聞いてホッと胸の撫で下ろした。




 小松成美は自分の秘密を俺だけに話してくれた。

俺と眞樹同様、小松成美も双子だったのだ。


でも産まれて来た時亡くなったのだ。
小松成美はその時から、二人分の時を扱えるようになったらしい。
小松成美は自分の意識を飛ばすのではなく。
もう一人の意識の中にはいれたのだ。
そして二人は小松成美の体を共有することになったのだった。


それがあの、氷室博士の絵を描いた原動力だった。


小松成美は氷室博士を好きだったのだ。
だから、自分は其処に居ながらもう一人の分身に博士を見てきて貰ったのだった。