そして個展当日になった。


《第二の小松成美現る》

それは……
そんな風にいわれた。


そして初めて……
俺の絵が売れた。

購入してくれたのは、何時も母が映像で見せてくれた人物……
小松成美だった。

初めて見たのに直ぐ解った。
母の見せてくれた、あの映像の中の人物そのままだったから。


(あぁ到頭この日が来てしまった)

俺の心は期待と不安で早鐘のように鳴り響いた。




 でも心配することはなかった。
俺を見つけるなり、報道陣がいるにもかかわらず傍に駆け寄ってくれた。

此処に来るまで泣いていたのだろうか?
頬には数本の涙跡があった。


一斉にたかれるフラッシュ。
その度それが宝石のように輝いていた。


そんな中で……
小松成美は俺の体を抱き締めた。


「此処に居たのね、私の卵ちゃん」

やっとそれだけ言って、又泣き崩れた。


俺はその時感じた。
俺の遺伝子。
小松成実の苦悩を。




 小松成実は知っていた。

あの個展の、ファンを装って近付いた人が何かを撒いたのを。


そのお陰で自分の意識が薄れ倒れた事実も。

連れ去られた後の手術で、自分の子宮と卵巣が奪われたことを。


そして密かに自分の分身が育てられていることを。

だから天才少年少女の呼び声高い画家が現れた時、率先して逢いに行っていたのだった。

それは恨み辛みを言うためではなかった。


「やっと見つけた」

その証拠に小松成実は、そう言いながら俺の体をもう一度しっかり抱き締めた。

そして集まったマスコミに言い放った。


「皆さん、この子は確かに第二の小松成実です。この子の感性は本物です。私が保証します!」

又、一斉にフラッシュがたかれる。

俺と母はやっと巡り会うことが出来た。

二人は抱き合ったままお互いの意識を交換しながら逢えなかった日々を補い合っていた。