その時。
ドアを叩く音がした。


「眞樹、お前ってゆう奴は!! 幹部を使って俺達を殺す気なんだな!!」

俺は必死でドアを体で防いでいた。


「眞樹!! 俺はどうになってもいい。でも、宇都宮まことだけは助けて遣って欲しい!! 彼女を薬付けから解放してやってくれー!!」

俺は宇都宮まことを引き寄せ、最後の抵抗をしようとしていた。


「薬物依存性にされていた彼女がやっと笑ったんだ!! 俺に気付いてくれたんだ!! なのに……此奴等は……」
俺は泣きながら、必死に宇都宮まことの延命を眞樹に訴えていた。




 もはや体力は限界だった。

俺は降参することも考え始めていた。

でも、その度に首を振った。


宇都宮まことと二度と離れたくなかった。




 俺はもっと宇都宮まことの体を引き寄せた。


背中と頭でドアを押さえ付けてから、お尻を突き出す。
そんな無理な体勢にしてまで唇を寄せた。

勿論キスをするためだった。


又離れ離れになるかも知れない。
それでも俺は、この熱いキスによって勇気とパワーを貰いたかったのだ。


(何のためのパワーだ……何のための勇気だ……)


俺はただ……
愛する宇都宮まことをオカルト教団から守り抜きたいだけだった。




 『何遣ってるんだ!!』

部屋の向こう。
リビングダイニングから声がした。


その声に聞き覚えがあった。

松本君だった。


(やはり松本君も、オカルト教団に洗脳されていたのか? 俺に宿題を教えてくれた……あんなに優しかった松本君まで変えるなんて!)

俺は眞樹に……
有事対策頭脳集団に腹を立てていた。




 俺は何気に、バリケードになっている母のベッドを目を向けた。

其処には此方を睨んでいる数あまたの目があった。




 程なくして、バリケードは破られた。
屈強な男達がなだれ込んでくる。
その人達は銃を構えていた。


手を上げようと思った。


でも宇都宮まことが俺の手を握り締めていた。


俺は宇都宮まことの体を引き寄せて、覆い被さって目を瞑った。


そんなのは勇気だなんてとても言えない。

でも……
俺は少しでも、宇都宮まことをこの体で守ってやりたかっんだ。