その時……
白い部屋の隠し扉のドアが開いた。

あんな場所に、あったこと自体知らなかった。

俺はこの部屋の住民でありながら、何も気付かずにいたのだった。


宇都宮まことが凍り付く。

その表情が苦痛に変わる。


(此奴等か!?)

俺の体も震え上がった。

でも此処で遣られる訳にはいかない。


俺はコチコチに固まって、動けなくなった宇都宮まことの体を抱いて必死に一階の母の部屋を目指した。


まことのその態度で、コイツ等が教団でどんな立場なのか察した。
まことを苦しめた張本人だと言うことも……
だから、俺はまことを守りたかったんだ。
コイツ等の魔の手から。




 チワワシールの付いた携帯を充電器に差し込んだ。

突端が赤くなり、充電が開始された。

でも、画面は暗いままだった。

俺は、肝心なことを忘れていた。
電源ボタンを入れていなかったのだった。
俺は慌ててスイッチを入れた。


警察へ電話をするつもりだった。


でも俺は躊躇っていた。
宇都宮まことが連れて行かれると思ったからだった。

何の薬を投与されたのか解らない。
でも宇都宮まことの苦しみもがく姿は、文献で読む麻薬の禁断症状に似ていた。


(まことが逮捕される!!)

俺はガチガチと異様な音のする歯の震えをどうすることも出来ず、ただ人間バリケードとして内開きのドアに背を付けていた。




 その時、携帯がなった。


表示は若林喬……
俺の名前だった。


俺の携帯だった。
それを持っている人物……

眞樹以外は考えられなかった。


眞樹が俺を探してる。
そう思った途端怖くなった。


携帯電話に付いているGPS機能。
それで検索されたら、一溜まりもないと。




 仕方なく俺は携帯を受信した。

もう既にこの場所は判明しているはずだったから。


「眞樹か? なあ眞樹……お願いだからいい加減で彼女を解放してやってくれないか!」

俺は思い切って、眞樹に宇都宮まことの解放をたのんでみた。


『えっ何の話だ?』
でも……
眞樹は知らっばくれた。


「宇都宮まことの薬付けだよ!!」

俺は思わず大声を出した。



背中で押さえ付けていたドアが少し動く。