(ヤバ! ―ヒヤー! 遊びにも行けないってか)

もし菌でもばらまいてしまっては大変なことになると考えたからだ。


(そんなことって……)

俺は溜め息を吐きながら受話器を置いた。


今のところ患者は十七名。
全員が三年生だと言うことだった。


(ありゃお昼は? そうだよ。何時も昼は学食だったんだ。お弁当なんて用意してくれているはずがない……そうだ! その学食の小遣い貰うの忘れいた。ヤバい! コンビニにも行けない)

俺は焦っていて肝心なことを忘れていた。


(そうだ。外出禁止だった……)


俺は又頭を抱えた。


その途端にズキズキとぶり返す。


(本当にどうにかならないのかな。あのベッド最悪だ。そんなこと言ってる場合じやないよ)

俺は途方に暮れていた。


俺は母がいつ帰って来るのかさえも知らずにいた。




 俺の名前は若林喬(わかばやしたかし)。
高校三年生。
十七歳。

当然ながら出席番号は最後だった。

でもまだ、俺の家が比較的学校から遠くないからいいけれど。

何故俺に喬って名前が付いたのかと言うと……
映画で主役を演じた役者さんから戴いたらしいんだ。
なんか、生きるってタイトルだったらしい。

母は俺に生きて欲しかったんだって。
だから尚更、一人でも生きなきゃと思ったんだ。




 それはそうと、さっき電話で担任は不思議なことを言った。
朝の電話は自分ではないと。


そりゃそうだと思った。
やはり俺は最後の最後。


眠っている時間に電話など来るはずは無かったのだ。


(ありゃー。そうなると誰なんだ? 俺に頭をぶつけさせた犯人は?)


自分のことを棚に上げて良く言えると思う。

でも俺はさっき電話に出られ無かったのでチャンと担任に謝ったんだ。

でも先生は、していないと言ったんだ。




 何時も知らない内に帰って来て、食事の準備だけはしてくれる。


そのくせ、何時も知らない内に居なくなってる。


(これじゃ家政婦を雇っているのが俺のようだ)

俺は時々そんな疑問に苛まれていた。


俺は、母が何処で働いているのかさえも知らされずにいたのだ。


その部屋は俺を拒み続けている。

そう思ったことも多々あった。


でも何故かその部屋の秘密を知りたいとは思わなかった。