でも眞樹はきっと気付いてたはずだ。

だから俺と同じ高校を選んだのだ。


落ちこぼれと言われて久しい俺でも入れる高校だ。

成績優秀な眞樹が通うようなレベルではなかったのだった。




 俺は初めて自分の意志で下の階の様子を見てみた。


床に這いつくばったままで目を瞑り意識を飛ばす。


高所恐怖症の俺にはそれが関の山だった。


もう一度此処から墜ちたくはなかった。


なぜなら此処は、俺が子供の頃良く見た空を飛ぶ夢の場所だったから。


鬱蒼とした囲いの向こうに広がる風景。
それは正に此処だったのだ。


俺を呼んでいたのは此処だった。


(だから俺は此処から墜ちたのか? 俺は自分の夢の正体を知るために、宇都宮まことと出逢ったのか?)


俺は宇都宮まことに負わせてしまった運命を、これからの俺の生き様を見せることで償おうと考えていた。


そう……
まずは宇都宮まことを探し出し、助け出すことが先決だった。




 小高い丘に建つ一戸建て住宅。

其処は望月一馬がカモフラージュのために建てたものだった。


父の提案に乗った振りをして、挑んだタブー。


第二のキリストに眞樹を近付ける。

そのための英才教育システム導入。


この家に塾とフリースクールをつくり、天才児童達を徹底した管理下で育てるためだった。

眞樹に競わせ、より上を目指せるために。


でも父の本当の目的は、俺を母である小松成美に近付けるためだった。


それに気付いた眞樹。


俺の存在を封鎖をしたいと思っていたのだろう。




 意識を飛ばして垣間見た白い部屋の下の空間。

其処に並べられていたのは、二段ベッドだった。

一段目に洋服収納の付いたベッド。


それは俺の部屋にあるベッドそのものだった。


俺のベッドは思っていた通り、二段ベッドの片割れだったのだ。




 眞樹はきっと自分の立場に気付いていたのではないだろうか。


幾ら全国一の成績を取ったからと言っても、それだけで満足してもらえない苦しみ。


それを紛らすための俺の殺人計画。


俺に携帯電話を紹介してくれたのは、きっと俺を殺すチャンスを見つけるためだったのではないだろうか?


眞樹はそれを期に、真っ白い部屋の下のスペースに隠し部屋を作った。


それこそがあのケーゲーサイトの本拠地だったのだ。