俺はあの時。
宇都宮まことの裸体を描いた時に感じた疑問が解けたように思った。

幽体離脱した俺の本体が、宇都宮まことと墜ちた俺なんだと。

俺は意識を飛ばすのではなくて、意識を家に置いたまま瞬間移動したのだ。

きっと俺の体は携帯の画面の中に入って、宇都宮まことを探し続けていたのだろう。

だからこの部屋にいた宇都宮まことを探し出すことが出来たのだ。


きっと眞樹はそれを知ってて、此処に連れて来た。


俺の力を見極めるために、俺に携帯電話を与えた。


そう考えると、少しずつ謎が解けていく。




 俺は今、このドアの先をどうしても確かめなくてはいけないと感じた。


思い切って覗いた先は隣家の庭だった。

驚いたことにそれは眞樹の家のようだった。


携帯ショップの看板に見覚えあった。


あの日眞樹の言った三階建ての意味を初めて理解した。




 オカルト教団は代理母だと知らず、家政婦として自宅から行ける部屋をを提供したのだった。


それはきっと、父と佐伯真実の発案ではなかっただろうか。


母性本能に目覚めた代理母に、俺の母と眞樹の乳母役を与えたいがために。

この家を造らせた。


鬱蒼とした小高い丘には回り道が用意された。

それはきっと俺に実験を見抜かれないための工夫。


俺はまんまとそのトラップに堕ちた。
父の策略とも知らずに。




 『彼処から本当に堕ちて来るとは…… 俺の想定した通りお前は馬鹿だよ』
眞樹は不気味な笑い声を上げていた。


あの日……
宇都宮まことと墜ちたあの日。


眞樹は俺達がそうなることを予想していたんだ。


だからあんなことが言えたんだ。


でも運良く……

眞樹にとっては運悪く、幌付きのトラックが店の前に止まっていた。

だから俺と宇都宮まことは奇跡的に助かったのだった。


自分の携帯電話の、自分の腕試しに作ったアンビエンス・エフェクト。

まさかそのゲームで俺が遊んでしまうなんて考えも及ばなかったはずだ。

本当に、偶然だったはすだから。




 眞樹は、高校の説明会の時に俺と母を見つけ興味を持ったようだった。


松本君の言っていた通り、自分に瓜二つの子供。

しかも同じ年。
同じ誕生日。


眞樹は乳母兼家政婦の女性が俺の母だと知った時、ある懸念が生まれたという。


そして父と母との関係を悟ったらしい。