彼女達は望月一馬が、眞樹の遊び相手として集めた孤児だった。


それを承知の上で、実験は繰り返されていたのだった。


教団に集められた孤児達はみんな出身地の名前が付いていた。
それは善意の集団だと思わせる工夫だった。
身寄りのない子供達の親を見つけて返す事を立て前とする為だったのだ。

保護された地域の名前を付ける事で、事務処理をスムーズにする意図もあったからだった。


競合させる為に集められた孤児達。
その力を発揮させる為にも役立つ地方名。


孤児である事を認識させる為でも、大いに役立つ名だったのだ。



蹴落とされた者は、蹴落とす為の罠を仕掛ける。


その修行場は、修羅場と変わって行ったのだった。


お前達は其処で捨てられた。
お前達は其処で拾われた。

その事を知らしめる為に。




 眞樹の遊び相手の中に、俺の親友松本君もいたようだ。


松本君は養護施設を引っ越し後、眞樹の家に来たのだった。


眞樹の本当の住まいは隣町にあって、携帯ショップの上は修行場だったのだ。


あの……
眞樹の二段ベッドを共有していたのは松本君だったのだ。


松本君は、別棟の教団運営施設に所属させられた後に強化児童として共同生活を強いられていたのだった。


眞樹にもっと切磋琢磨させる為に、全国から集められた孤児達。

松本から来た松本君は、まず俺の学区へ転入した後眞樹の学区へ転校して行った。

実力を見る為だった。

そのようにして、幹部候補生が絞られていく訳だ。




 松本君は眞樹を見て、飛び付いて行った。


親友になったばかりの俺だと勘違いして。


その時……
眞樹は俺の存在を初めて知ったのだった。




自分と瓜二つの子供がいる。

その真実をもっと知りたい眞樹。

心の寄りどころを眞樹に求めた松本君。


あの二段ベッドの上下で交わす友情。

過去を語り、未来を語る。


二人はいつの間にか同士になっていたのだ。




眞樹は悩んでいた。
物心ついた時点で言われていた世襲と方向性。


常にトップであり続ける事が、眞樹に課せられた運命だったのだ。