だから……
今ではギフト方と呼ばれている、精子と卵子の出会いの場である卵菅に授精卵を入れたのだ。

それが乙女のままで子供を妊娠させる最適な方々だと思っていたのだ。


生神女福音・マリアをこの手で誕生させる事。
それが自分に与えられた使命だと、一馬は思うようになっていったのだった。




 三月二十五日。
その日はキリスト教では十二大祭の一つ、《お告げの祭日》とされていた。

その日を受胎告知の日に定めて、準備して行ったのだった。


でもその日。
真実は気付いた。

アメリカ女性特有のブルーアイ。
それがカラーコンタクトレンズによるものだと。


それを踏まえて、良く見ると今まで見えていなかったものに遭遇する。


ブロンズヘアー、黒い肌。

それらの全てが、作り出されたものである事に気付かされる。


そして真実は知った。


マリア・ローズだと思い込んでいた女性が、若林結子だった事に。




 自分の立ち会いの元で行われた、あの儀式……

それによって愛する人が妊婦になった事を。


真実は……
受胎告知を受ける女性が、若林結子だった事を認識してしまったのだった。


確かに、面接した女性に似てる。


でもそれは……
若林結子その物ではなかったのだろうか?


神を冒涜した報いだと、真実は落胆した。


結子が博士を愛している事は知っていた。

知ってはいたのだ。


だから……
氷室博士教授と小松成実の体外受精卵を育てる手助けをしたのだ。


でも……
それが氷室博士教授の企みだったことを知らなかったのだ。




 真実はいたたまれなくなって其処から逃げ出した。

彼は泣きながら放浪した。

犯した罪の大きさに気付いて……


気付いたら、片方の靴が脱げていた。
そしてどうせならと、もう片方も脱ぎ捨てた。