佐伯真実は、代理母の実験の出来る産婦人科を探していた。
氷室博士の気持ちが本物だと思っていたからだ。
自分も愛する人がいる。
同じように諦めなくてはならない人がいる。

だから尚更叶えてやりたかったのだ。




 一馬は受胎告知の日を三月二十五日に決めていた。
大天使ガブリエルをマリア元に遣わせた所謂お告げの日に。

そのための準備だったのだ。


そして、宇都宮市内に潰れかけてた医院を見つけた。

でも、交渉は物別れに終わった。

勿論体外受精の話はしてはいない。
でも、マスコミによる養護施設の攻撃がネックとなっていたのだった。
それでも交渉に誠意を示そうとした佐伯真実。


そんな時……
先に戻した幹部の起こした交通事故。


佐伯真実は、胎児を助けることに奔走した。


超未熟児用の保育器を即座に調達してきた佐伯。


其処の医師の目が変わる。


そして、中絶に対する佐伯の本心を知ることになったのだった。




 佐伯真実は偶々中絶の相談に来た若い母親を説得した。

子供は国の宝。
将来を託す希望の光だと。


それは、中絶が女性へ負担をかける一因となっていたからだった。

その手術により体調を崩したり、後に子供が出来にくくなったりするからだった。


でも出産もかなりのリスクを女性は負う。

出産時に死亡する女性も多いのだ。


佐伯は積極的に避妊の講義もした。
その行為が医師を感銘させたのだった。

佐伯はただ……
望月一馬や、若林結子のような恵まれない子供を出したくなかっただけだったのだ。

この世から、一馬の言う宇宙人を出させなくするために。

佐伯は心血を注いだのだった。


佐伯真実は若林結子を本当は愛していた。

初恋の人だったのだ。


でも……
結子が孤児だったので家族から大反対されていた。


だからこそ……
望月一馬の作った有事対策頭脳集団の幹部になったのだった。


全ては愛する結子を守るためだったのだ。


でも結子は氷室博士教授を愛していた。
佐伯真実が氷室博士と小松成実の体外受精を応援したのは、結子に諦めさせるためだったのかも知れない。