スキャンダルを恐れて、隠れて出産させることにした。


確かに……
博士の子供には違いない。


それでも結子はそれが物凄く嬉しかったのだった。

教団関係者には、病気療養のためとして休暇願いを提出した。


誰にも気付かれず母となった結子は、養子と言う形で俺を育て始めたのだった。




 だったら何故普通に夫婦にならなかったのだろう?


いくら……
第二のマリアのためとはいえ……


母は未だに……


乙女のままだった……


(親父……可哀想だとは思わなかったのか? それとも……それ程までに小松成美を愛していたのか? 俺の元……俺の遺伝子……小松成美のために)




 何故、俺が放ったらかしだったのかを母が話してくれた。


それは博士の持論を試すためだった。


天才芸術家は自然に生まれる。


小松成美がそうだったように……



何も無い所からでも……

そのため、遊び場は真っ白な部屋だったのだ。


いくら汚しても叱られたないわけだ。


勉強しろなんて五月蝿く言わないわけだ。


俺はただ自由に育てられたのではない。


全て、実験のためだったのだ。




 母は心を鬼にして、氷室博士教授の意のまましたと言う。


だからせめて……
心の負担を取り除く手段として映像に夢中になっている時に仕事へ出掛けたのだった。


俺の本当の母……

小松成美の映像を流しながら。


もし俺が本当のことを知った時……


小松成美に事情を話しても良いと母は思ったそうだ。


出来ることなら……
一生そのままで……
母はそう思っていた。


母は確かに、俺を愛して慈しんでくれいたのだった。




 代理母は俺には仕事だと称して、毎朝眞樹の世話をしに行っていた。

本当の愛を知らない孤独な眞樹に、産みの母の優しさを届ける為に。

例え代理母だとしても、十月十日自分の子宮で子供を育てれば情も涌くし母性本能も目覚める。

代理母は母なりの愛情で、二人の子供を立派に育て上げたのだった。

自分の分身でもない体外受精卵。
幾ら愛する人の子供を育てる為だとしても、抵抗はあっただろう。

それでも母の役割を立派に果たし俺を愛してくれた。

感謝こそすれ、恨む筋合いではない。


俺は母に甘え過ぎていた日々を反省していた。