(ああ母さん……、俺だけの母さん!!)

俺はあまりの嬉しさに興奮していた。




 博士を愛し……


博士のためだけに生きる……


若林結子……


彼女も孤児だった。


仙台市若林区……


そこの海岸で産み落とされる。


岩の多い磯は隠れて産むのに好都合だったのだ。


偶々其処に遊びに来ていた施設の車の中に、へその尾が付いたまま遺棄される。


役員が気付いた時は、トイレ休憩中だった。


施設に戻り、病院へと配送された。

そしてお決まりの、乳児院を経て次に孤児院へと廻される。


結子は其処で、望月一馬と出会ったのだった。


 其処で……


後の有事対策頭脳集団の仲間と知り合い……


望月一馬の信者、第一号となった人だった。


そんな彼女が博士と出会い彼を愛した。


でもその事実を一馬は知らなかった。


あくまでも、信者として眞樹を育ててさせていたのだった。




 望月一馬や佐伯真実と顔見知りだった結子。

正体を張れなくするためにある工夫がなされた。


目にはカラーコンタクトレンズ。

髪はカラーリング。


そして肌を黒く塗る。


博士の教え子。
アメリカからの留学生。

そう紹介したのだった。

既に……
体外受精による代理母が認められていたアメリカ。

だからこそ……

一馬と真実はこの話に乗ったのだった。


博士にはそうなることは解っていた。
だから結子を選んだのだった。


それは……
博士を愛し、彼のためなら苦労も厭わない彼女の本質を博士が見抜いていたからだった。


結子に定着した卵が分裂を繰り返し双子となったことを知ると、博士にある考えが浮かぶ。


それは結子へのご褒美だった。


本当は引き離すつもりでいた代理母に、子供を育てさせること。

心の中では博士との子供を欲しがる結子の望みを叶えてやることだった。


その上……
望月一馬の興した有事対策頭脳集団の内部事情にも精通して結子は、まさに打ってつけの人物だったのだ。


だから結子は、博士の内縁の妻だとして家族に紹介されたのだ。




 胎児を守るために、帝王切開による出産となる。


それは元々第二のマリアとなるために、博士によって決められていたことだった。


そう……
あの日を誕生日とするための工夫だったのだ。