でも俺は何故か笑い出した。


(何が高三にもなってだ。さっきまで母さんを探して求めて泣いていたくせに)


目を閉じると又夢の中に舞い戻りそうだったので、慌てて首を振った。


(カッコ悪)
そうは思う。

でも……
やっぱり寂しいよ。
そして辛いよ。


母は仕事ばかりで……
俺は一人きり。

それでも耐えて来た。
母の愛に支えられて、母の胸に抱かれて眠る
供に戻って……


あの夢の中の優しい母に甘えて……



 俺は以前……
このベッドと同じ物を見た覚えがある。


そのベッドはこれとは違って、二段ベッドだった。

だからきっとこのベッドもそうだったに違いないと思っていたんだ。


その二段ベッドも、下に引き出しが二つある。

アイツは二人っで使っていると言っていた。


俺は其奴、望月眞樹(もちづきまさき)が羨ましかったんだ。


その時に、亡くなったと言ったチワワの写真を見せてもらったんだ。


あれは確か……
俺が初めて携帯を買った日だった。


(あれっ……そう言えばこの頃犬の鳴き声が聴こえてこないな。そうだ、すっかり忘れていた)


過去を辿ってみる。子供の頃から何時も聴いていた、キャンキャンと言う子犬の鳴き声。
小さな小さな声。

独りぼっちの俺は羨ましくて……
何処の家の犬なのか知りたかった。


でも此処は小高い丘の一軒家。

家の周りには住宅などなかった。


何故急に思い出したんだろう。


そうだよな。今とっても虚しいからだ。


それに……
眞樹のトコのチワワの写真を思い出したからだ。


(そうだきっと……ああ……
誰か傍に居てくれたら寂しくないのに……)