(代理母……本当に……本当なんだろうか? 信じられるはすがない……母さんが……代理母だったなんて……ところで……代理母って何なんだ?)


自分の娘のために、母親が代理母になったニュースは聞いたことがある。


(つまり……自分の卵ではない。それだけのことか? 自分の遺伝子を持たない子供を……体外受精卵から出来た子供を……自分の胎児ではない命を子宮で預かり育てることか? 俺の母は……その代理母だと言うだろのか?)

俺はまだ信じられずに自問自答を繰り返す。




 (それじゃ……俺は本当に……本当に……氷室博士と小松成美の子供なのか? 母さんが見せてくれた映像……あの人が……小松成美……? 俺の本当の母さん……? いや違う! 俺の母さんはこの人だけだ! 俺を子宮で育ててくれた、この人だけだ! 俺を抱いてくれたこの人だけだ! 俺を愛してくれたこの人だけだ!)




 俺は母を見ていた。
母の表情を見ていた。


(母さん……何だか随分久しぶりのような気がする。こうやって、見つめるのは……何年ぶりだろうか? いや……多分初めてだ)


俺は今初めて……
まじまじと母の顔を見ていた。


(母さん……綺麗だよ。俺……自慢だったんだ。俺ずっと……母さん似だと思っていたんだよ)




 「愛してる……」
母はやっと……、言ってくれた。


「アナタを愛してる……」
母は言ってくれた。


それだけで俺は嬉しい。


その言葉を聞いて……
眞樹は静かに集中治療室を後にした。


(親子?水いらず……)


俺は……
隣で眠っている宇都宮まことを気にしながらも……
母だけを見つめていた。