それでも体外受精卵を取るだけでは物足りなくなった博士。

他人の子供をもう二度と宿してほしくないと思い、子宮を含む女性の機能全てを摘出させてしまったのだ。

正に邪悪の愛。

そのものだった。

子宮癌だと告げていたのが功をせいして、家族は感謝さえした。


こうしてこの犯罪行為は、誰にも気付かれないままに進行した。




 代理母として選ばれたのは、教授の教え子・若林結子(わかばやしゆうこ)。
つまり俺の母だった。

母は、教授を愛していた。
だから代理母を快く引き受けたのだった。


マリア・ローズは本当に居た。
でもそれは名義を借りただけだったのだ。


代理母になるための条件。

①教授の命令を第一に考え実行出来ること。

②ヴァージンであること。

汚れを知らない乙女。
正真正銘の処女だったからこそ、代理母に選ばれたのだった。

それはこの国の将来を託すべき人物の母を、第二のマリアとするためだった。


でも予想外の事態が起こった。
代理母に定着した受精卵は分裂を繰り返し、双子となったのだった。

俺と眞樹は、本物の双子だった。
だから誕生日が一緒だったのだ。




 有事対策頭脳集団の望月一馬はその事実を知らず、眞樹だけを受け取った。


眞樹にはありとあらゆる英才教育が与えられ、オカルト教団を背負って立つ超天才が誕生したのだった。

でもこれにも裏があった。

俺と眞樹の脳を調べ、出来の悪いとされた眞樹を渡していたのだ。

父のもう一つの実験。

能力にたけた子供に何も教育を与えなくても天才になれるのか?

反対に、普通の子供を秀才に育てられるのか?

俺と眞樹は正に父の身勝手な実験材料だったのだ。




この事実を眞樹が知ったのは、双子だと悟った時だったと言う。

だから尚更猛勉強をして、全国のトップの座を射止めたのだった。


博士がこのような画策さえしなけれは、俺達は双子のままでいられたのか?

それとも……
既にこの世の住民では無くなっていたのか?

俺の運命は造られもてあそばれただけなのか?

答えはきっと一生解らない。
でも今確実に生きている。
俺は生きていて良かったと思っている。


何故なら……
例え代理母でも母に出逢えたからだ。

若林結子と言う俺の母に出逢えたからだ。


俺の愛する、たった一人の母に……