博士は成美とその作品を愛していた。


でも成美の芸術作品は、時にはマスコミの格好の標的となる。


エスパー気取り……
モンスター……
人類を破滅に導く宇宙人……


面白可笑しく茶化す文面に博士は震えた。


そして、躍起になってそれらを否定して回った。


博士は全力でそれらの記事を阻止しようとした。
成美をその手で守ろうとしていたのだ。


でも……
それは成美を困惑させた。


博士の立場が悪くなる。
成美はそう感じていたのだった。


感覚的には解っていた。
愛すること……
大好きな人を思いやること。


そう……
成美も激しく博士を愛していたのだ。


でも……
自分のせいで傷付く博士を見ていられなかった。


相互扶助したくて、七転八倒して苦んだ。


その道は前途多難。
未来は前途遼袁だと思われた。
だから成美は自ら身を退いたのだった。




 そうとも知らず……
成美と結婚するために博士は科学の勉強に没頭した。


成美を守るために、もっと力を付けたいと博士は思っていたからだった。


その結果……
天才科学者ともてはやされるまでになった。




でも気付いた時には成美には既に旦那と子供がいた。


博士には成美が解らなかった。

自分を愛していながら、他の男の子供を宿した成美の真意が。


幸せそうに映る成美を見るにつけ、疑いの目を向けてしまう博士。


そして、心の中のある思いに気付く。


成美を抱きたかった。

子供を授かりたかった。


それが出来ない今だからこそ……


博士はある考えを実行しようとしていたのだった。