それは子供の頃の体験だった。


一馬はUFOらしき物体を友人と見てしまったのだった。


学校帰りの田舎道。
何気に空を眺めていると、目の前に大きな星が瞬いていた。


それは師走に入ったばかりの夕方近く、一番星が出る頃だった。


『何だろうあれは?』

二人はその一点に釘付けとなった。


それを見透かしたのか、その後その物体は忽然と消え失せたのだった。


『空飛ぶ円盤!』
一馬は言った。


『時代遅れただよ一馬。今は未確認飛行物体、UFOだ!!』

そう言ったのは友人の佐伯真実(さえきまさみ)だった。

その友人こそ、後に医学博士となる一馬の作り上げた教団の幹部にになる人だったのだ。


望月一馬は、この佐伯真実の影響をモロに受け、天体部門に感心を抱くようになっていったのだった。




 これも又夕方……

周りが薄暗くなる頃の事だった。


山の上に家があった。
一馬はこの風景を又佐伯真実と見ていた。


『随分高い所に家があるな』
真実は言った。


『本当だな。でも家と言うより要塞みたいだか』

一馬も言った。


でも……
それは翌日には跡形もなく消えていた。


『何だったんだ!?』
一馬は真実に訪ねてみた。


でも解る訳がない。


そんな時……
真実が突拍子もないことを言い出した。


『もしかしたら……、あれはラピュータかも知れないな』


『そうだな……きっとラピュータだ』
一馬はそう答えた。

ガリバー旅行記の天空編に登場するラピュータ。
二人はそれをイメージしていたのだった。


『でもそれを言うなら、ラップ・ウーテッドじゃないかな?』


『ラップとは確か……、太陽の光が海の水でおどる事だったよな?』


『ウーテッドは翼!!』


『ラップは高い』


『ウントゥーはおさめる人』


『ラプントゥー』


二人は益々、その世界観に飲み込まれて行ったのだった。




 スイフトのガリバー旅行記の飛島を読み漁る。


『スゲーなー。二百五十年以上も前にこんなの書いたんだもんな』


『もしかして、ガリバーって宇宙人?』


『いや、それを言うならスイスト自身じゃないかな?』


二人は何時もそんなことばかり言っていた。


『そうだよきっと、既にこの地球上には様々な宇宙人が来て生きて居るんだよ』