でも……
博士が興味を持ったのはオサムシだった。


そう……
元々博士はオサムシに親しみを感じていたのだった。


首長族のオサムシ。
餌はミミズやカタツムリだった。


真っ黒い少し不気味なオサムシを、博士は追い掛け廻した。


思い込んだら一直線。
そして……
やっとの思いで、一匹捕まえることが出来たのだった。


でも……
成美はそれをすぐに逃がしてしまったのだ。

でもそれはオサムシが嫌いと言う理由ではなかった。




 その時成美は言った。


『こんな小さな虫にだって、生きる権利はあるのよ。研究の為とか言って標本にするのだけは辞めてほしいの』

成美はただ昆虫採集の標本が怖かったのだ。


でも、何気なく言った一言が、博士の心に届く。


博士はこの後、昆虫を観察したり、写真撮影する事だけにしたのだ。


誰より念入りに調べ、ベストの状態での撮影。


その幼稚園児らしからぬ行為が、天才科学教授へと導いてくれたのだった。


そう……
全て、成美の一言から始まったことだったのだ。




 でも博士はそれだけで留まらなかった。
自然科学だけでなく、物理にも興味を持つようになったのだった。
天体部門にも目を向けた。


父親の望み通り、博士は知識をドンドン吸収していく。

そして国立大学へと進んで行ったのだった。


その時……
後に眞樹の養父となる望月一馬(もちづきかずま)と出会ったのだった。




 望月一馬は日本の未来を考えていた。


有事対策の無い日本。


このままではいけない。


そう思い立ち、頭脳集団を作り上げようとしていた。


でもその有事を理解してくれる人は皆無だった。


一馬は北佐久郡望月町で拾われた捨て子だった。


後に佐久市となるこの地域は宇宙開発基地に力を入れていたのだ。

そんな影響を受けた友人達は、宇宙論を繰り返していたのだった。


だから自然と興味は宇宙に向かっていった。


そして、一馬はみんなから宇宙人と呼ばれるようになる。
人並み外れた頭脳の持ち主だったからだ。


有事対策頭脳集団を設立した当初は、異星人の襲来を想定した所謂オカルト教壇だと思われていた。


でも一馬の真意は違っていたようだ。