成美はその時から、落書き帳に良く虫の絵を書き写すようになっていったのだった。

見てるだけではつまらなくなったからだった。


それはまるでボタニカルアート。


成美は昆虫の触角の一つ一つまで忠実に再現したのだった。


でも本当の開花は別な次元にあった。


それは偶々……
写生会に用事があって遅れた博士の洋服を、友達に描いて見せたからだった。


成美は博士のことが心配で気が気でなかった。

だから自然に出てしまったのだった。
別の自分が……


青いシャツに半ズボン。

博士の絵だと言いながら描いていた……

後の自分の運命を決めるかも知れない一言を。


実際に現れた博士を見て、誰もが驚きの声を上げた。
何時もの園児服ではなく、成美が描いたスタイルだったからだっだ。




 《天才児現る》
それはそのように伝わっていった。


其処に居ながら、見えない物を描く。

それはまるでエスパーのようだと、当時の新聞は褒め称えた。


でも……
その写生会に行く前に、二人の接点が有ったか無かったかを徹底的に調べて上げたのだった。


そんなこともあり、二人は急接近する。

成美の豊かな感性に刺激され、博士も開花していく。


そして博士は成美を愛し始めだのだった。




 博士はオサムシの研究を始める。
蝶やカブトムシでは物足りなかった。
もう既に沢山の研究書物が発売されていたからだった。
人と違った研究。
それが、成美の心を掴む方法だと思い込んでいたからだった。


飛ぶ事を忘れた昆虫。


出会いは……
マイマイカブリだった。


カタツムリを捕まえようとしたら、食べていた……


思わず手が遠退いた。


やがてそれはオサムシの一種だと知る事になる。


日本中に数多く生息するオサムシ。
取り分け綺麗なルリ系に成美が惹かれると思ってした事だった。


それはの多くは北海道にいる。

博士は何時か、北海道に生息している、歩く宝石と呼ばれるオサムシを捕獲する事を夢に描いていた。




 博士は昆虫の育つ環境にも注目した。
それは父親の影響だった。
蟻・ダンゴムシ・ハサミムシ。
石などをひっくり返すと必ずいるそれら……
父親はそんな身近な昆虫を愛し研究をしていたのだった。