(なんで眞樹が此処に居るんだ!? なんであんなに冷静なんだ!? それに……何なんだこの痛みは!? バーチャルではなかったのか!? なんで此処に宇都宮まことが居るんだ!?)

俺はパニックっていた。
でも冷静になろうと思っていた。


(俺は……俺の体は……何故こんなにがんじがらめなんだ!?)
でも結局、俺はそのままだった。




 「もしかしたら、飛び降りてくれるかと思っていたけど。まさかね」
眞樹は含み笑いをしているようだった。


「彼処から本当に堕ちて来るとは……、俺の想定した通りお前は馬鹿だよ」
眞樹は不気味な笑い声を上げていた。


バーチャルな世界だと思ったから飛び降りたんだ。

第一高所恐怖症の俺が、そうでも思わない限りこんなことする訳がないだろう。


でもそんなこと言えるはずがない。

俺はただあの場所から逃げたかった。

そして、現実の世界へ向かって飛び込みたかった。

ただそれだけだった。

そう、宇都宮まことと共に……




 (ごめん……ごめんな……)

俺はひたすら宇都宮まことに誤った。


俺と出逢わなければ、こんな目に遭わなくて済んだのに……


俺がアンビエンス エフェクトさえ遣らなければ……


(本当に……ごめん……)


今……
俺の隣で寝息を立てている宇都宮まこと……


(目が覚めた時……何て誤ったら?)

俺はそんなことばかり考えていた。


でも存在していた事実に喜びを隠しきれない自分も其処にはいた。


俺はその時……
てっきり学校の屋上から飛び降りたのだと思っていたのだった。


そう……
アンビエンス エフェクトのゲームの中に入り込んだように、屋上に瞬間移動して……


(瞬間移動!? それが俺に出来ればの話だが……)




 そんな中でも眞樹は冷静だった。

パニックってる俺の姿を悠々と眺めていた。


「でもまさかこんな結果になろうとはな。運がいいなお前は、死んでいてもおかしくはなかったのに」

眞樹が言う。


(そりゃそうだ。彼処から落ちたんだ。命がある方が珍しいのかも知れないな)


「お前は本当に解らない人間だ」
眞樹はそう言いながら、又宇都宮まことに頬摺りをしていた。


俺はその態度にカチンときた。