宇都宮まことの絵は昼頃には完成していた。

初めは馬鹿にしていた宇都宮まことだったが、絵を見て表情を変えた。

『天才?』

『○』
『×』

俺は
『×』
を選ぶ。

『嘘ばっかり』

『ご褒美あげる』

『甘える』
『抱き付く』
『逃げる』

俺は暫く考えた。

『甘えたいし』
『抱き付きたいし』
でも本当は
『逃げたい』

二人で逃げたい!!

バーチャルなラブなんてイヤだ。
俺は生身の宇都宮まことと恋をしたい!!!!


そう……
俺はその時、完全に宇都宮まことの虜になっていた。




 『俺、君をマジで好きになった』
通信欄に書き込む。

だから君と………

『逃げる』

決定ボタンを押す。

俺は宇都宮まことの手を取り走った。

この先に何があるのか解らない。

俺達は、無我夢中で走り続けた。


そして……


屋上から身を投げていた。

二人で逃げられる場所は此処しかなかった……


この場所以外……
二人で生きる道は無い。


俺の何かがそう判断したからだった。


脳裏に……
あの白い世界が浮かぶ。


俺はその時……
確かに飛べるような気になっていた。




 判らないんだよ。
何故其処なのか。
でも俺に一つだけ解ること。


その場所が俺を呼んでいるように思った。


宇都宮まことがニューハーフであろうがなかろうが関係なかった。


ただ俺だけを見つめてほしかった!


俺の孤独を埋めてほしかった……


(ん、ニューハーフ……!? あの声……? 確か何処かで……そうだ。俺が童貞だと知っている人物……)


俺は遠のいていく意識の中で何かを感じとっていた。




 目が覚めた時俺は、病院の集中治療室のベッドの上にいた。


(此処は何処だ!? 何故此処に居る!?)

頭の中では病院だと判っていた。
でも信じがたい事実だ。

だって俺は今まで、食卓で携帯相手の恋愛シミュレーションゲームに没頭していたのだ。


(恋愛シミュレーション!? そう言えば宇都宮まことは!? まさか一緒だなんてあり得ないよな?)


俺は恐る恐る隣のベッドを見た。


(えっ!? 嘘ー、マジで!! どうして彼女が此処に居るんだ!?)