(童貞か? でも普通、高三だったらそうなんじやないのかな?)

俺は又、同じ言葉を思い付く。

思考はそれほどに狂っていた。


(俺はまだチェリーボーイだ。ねえー、もしかしたら眞樹はもう? 眞樹は何時チェリーを捨てたんだろ?)

俺は又チワワのシールを触りながら考えていた。


その時……
そう言えば眞樹と携帯を選んだ時、そんなことを言った覚えがあったと思い出した。

俺はあの日まだ未経験だと告白した。


俺達はあの時から本当の親友になれたのだった。


俺は良く、空を飛ぶ夢を見ては泣いていた。

翼も無いのに両手を伸ばして飛ぶんだ。

夢を見た後怖くて、あのベッドてうずくまった。


それが高所恐怖症の元凶だった。


地面に叩きつけられる。

そう思い。

そう悟った。


だから眞樹にも話したんだ。

助けて欲しくて……


母が行ってはいけないと言う、鬱蒼とした囲いの向こうが呼んでいる。


本当はずっとそう思って生きてきたのだった。




 眞樹の家の傍に一度だけ行ったことがある。


眞樹の家は、俺の買った携帯ショップの上で三階建てだった。


だから安かったんだ。


父親が其処のオーナーで、眞樹のために上で塾も経営していると聞いた時は本当に驚いた。


不登校児のためのフリースクールって物も作ったと言っていた。


流石に眞樹の父親は違う! と思った。


そうなんだ。
だから眞樹は一番になれたのか。


息子や地域学習のために頑張っている人だと、俺はその時思ったんだ。




 『ねえ』

(――キター!! キター!! キター!!!!)

俺の心臓は爆発しそうだ!!

『何処かに行かない?』

『同行する』
『拒否する』
『逃げる』

勿論
『同行する』!!!!

画面が美術室に変わる。

『ねえ、私を描いてくれない?』

『同意する』
『逃げる』

勿論
『同意する』
!!!!!!

子供の頃から絵だけは得意だったんだ!!

最高の絵をプレゼントするよ!!

俺は真っ白いカンバスに宇都宮まことの裸体を描く。

見なくても分かっていた。
絵筆を持ったこの手が、宇都宮まことの体の全てを覚えていた。