(さあ、今朝は何だ?)

俺はおもむろにテーブルにある朝食を覆っている布を外した。


パンはバターロール。
飲み物は何時ものトマトジュース。
サラダはポテト。
茹で玉子は半熟。
それにフルーツ入りヨーグルト。

俺の大好物ばかりだった。

俺はパンとトマトジュース以外殆ど残した。

昼食にするためだった。

俺は今ホッとしている。

何とか昼食は確保出来そうだった。


(これにもう一つ。そうだな、パンでもあると良いな)

俺は冷凍庫を開けてみた。

忙しい母は、大量に買い込んだ食品を冷凍していた。


『パンは一番冷凍に向くのよ。凍っているのを焼くだけで食べられるから』

何時か母が言っていた言葉を思い出した。




 「ありがとう母さん」

俺は素直に母に感謝した。

母は俺が独りで居られるようにしておいてから仕事に行っていたのだ。
だから俺は何とか生きて来られたのだった。


(母さん……)
俺は泣いていた。


(今更だけど、ありがとう)


母だって辛いはずた。
子供を一人にして仕事に行くのは。
そう思いながら……


俺はテーブルの朝食に掛けてあった布を再び掛けていた。


そして目を閉じて……

あの夢を見ようとした。


もう一度母を追い掛ける夢を見ようとしていた。



でも……
その時はもう出ては来なかった。


俺はきっと疲れきった体を癒やして貰いたくて母の胸を追い求めていた頃に戻ったのだろう。


それがあの夢の答えのような気がした。




 携帯の画面は相変わらずそのまま……

それでも俺は宇都宮まことに逢いたくて、電源をOFFに出来ない。

それっきりでおしまいになるようで怖かった。

軽く画面にタッチすると明るくはなる。

でもずっと……
ゲームオーバーのままだった。


どれ位経ったんだろう。

気が付くと画面は別段階に入っていた。


『男だったらやってみな、やってまえ!』


(やってまえ?)
その言葉にピンときた。


(そうだ!? 石川真由美だ!!)


俺はさっき書いたメモを見ていた。




 ――遊びが大好きな元気っ娘。巻き髪がチャームポイント。口癖は『やってまえ!』――

やっぱりだ。

石川真由美が助け舟を出してくれたんだ。

こんな俺のために……。