『ったく!! 大人しくしていれば突け上がって!!』

宇都宮まことは豹変した。


次の瞬間。


『ゲームオーバー』
の文字が表示された。

どっちのゲームがオーバーなのか俺には分かった。

きっと宇都宮まことが降参したのだ。
俺は勝手にそう思った。


俺は確かに童貞だった。


(そうだよ! 生身の女性何て知らないよ! だから! 余計に興奮したんだ……)

ゲームオーバーの画面に向かって泣いていた。


「でもよー。高三なら普通じゃないの?」


その時俺はこの携帯が眞樹のだった事を思い出した。


(えっー!? もしかしたら眞樹はもう?)

その途端に画面が暗くなった。

俺は又ドキンとする。


(確かに似てる)

みんなが冗談に言う生き別れの双子説。


(これじゃ言われても当然かな?)


そんなこと思っていた。




 でも……
そんなことより問題は宇都宮まことだった。


(もう逢えなくなる!!)

俺は焦っていた。


何気に頬に持って行った指に……
涙があった。


(何で……何で泣いて居るんだ? そんなに好きなのか? 相手はバーチャルだぞ!! この世に存在してもいない相手だぞ!! どんなに好きになっても叶わない相手だぞ!!)

でも……
それでも良かった。


俺は今……
宇都宮まことの存在の大きさを思い知らされていた。


そう……
何時の間にか俺の脳は宇都宮まことに占領されていたのだった。




 涙が流れる。
俺はもう一度拭いた。


その時……
手に違和感を感じ、そっと拳を開く。

宇都宮まことの柔らかい胸の膨らみの感触がどうしても消えない。


(一体どうなっているんだ!?)

俺はじっと手を見つめた。


(あれは立体映像なんかじゃなくて……。えっー!? もしかして本物か!?)

俺はワナワナと震えていた。


(だからアンビエンス エフェクトなのか? 怖い……怖過ぎる!!)

その途端に思い出す……
宇都宮まことの笑顔。

宇都宮まことの仕草。

宇都宮まことのお尻。

宇都宮まことの胸の膨らみ。

俺は今宇都宮まことの全てに支配されていた。


でも……
俺は嬉しくて仕方ない。

何故だか解らない。