でも……
今俺は笑っていた。


(もしかしたら高所恐怖症が治ったのか?)

そう思えた。


山並みも家並みも見覚えがあった。


(そうだ。何時も教室から眺めていた街並みに似ている。違う。あれは似ているんじゃない。本物だ。何時も俺が眺めていた景色だ……)

其処にあったのは、授業中何時も見ていた景色だった。




 眞樹の携帯だと言うことをすっかり忘れていた。

でも時々指にあたるチワワのシールでその事実を確認する。


俺はその度、眞樹に誤る。

そして携帯を選んだ経緯を思い出す。


眞樹に勧められたからと言うわけでもない。
本当は使い勝手の良さで選んだ携帯だった。


まあ。初めて手にした携帯だから、どれでも馴れれば同じだと思ったのだけど。

でも結局俺は眞樹と同じ携帯を選んでいたんだ。
友情の証として……。


俺を一人前の男として見てくれた、親友の行為が嬉しくて。




 宇都宮まことの可愛らしさに、俺の心臓は爆発寸前バクバク状態。


だってアンビエンスエフェクトってタイトルは、臨場感溢れ満ちたゲームってことだろう〜。
楽しまなければ面白くないよ。


(もうこの際、高所恐怖症ってのはなしだ。所詮、携帯内のバーチャルゲームなんだから)


「リアルタイム学園恋愛ゲーム!!」
俺は勝手にサブタイトルまで付けていた。
まんざらでもなかった。

俺は自分のセンスにうぬぼれていた。


そう……
だからアンビエンス エフェクト(臨場感)なのだ。


こんな楽し過ぎるゲームの開発者は誰なんだ。

俺は携帯を間違え持って帰った、眞樹の親に感謝さえしていたのだった。




 眞樹は今頃……
きっと、病院のベッドの中だ。


(ごめん眞樹……俺……どうやら本気で好きになったらしい……でも……眞樹の相手の赤坂奈津美ではないのが幸いなのかな? 許してくれ眞樹……)


俺は眞樹を気遣いつつ……
携帯の画面を見つめた。


宇都宮まことに逢いたくて仕方ない。


俺はどんどんこのゲームにハマって行く。
堕ちて行く。


それはもう自分でも止められないと判っていた。