「サタンとルシファーは同一人物では?」
俺は聞いた。
だから敢えて聞いてみた。
望月一馬が大天使ガブリエルだと信じたからだ。


「ルシファーは堕天使ですよ」


(堕天使? 悪魔じゃなかったのか?)


「確かにサタンと同一視されている。ルシファーは神に戦いを挑んで負けて、地に墜とされた堕天使なんです。その後でサタンになったとも言われてはいますが」


シンデレラの継母の飼い猫の名前がルシファーだとゲーム好きなヤツが言っていた。
ルシファーはシンデレラが舞踏会に行けなくする目的で、掃除の済んだ場所を汚れた足で歩いたり、ネズミ達を追い散らす。

だから悪魔の名前を付けたのだとも言っていた。


「ルシファーは神に逆らったために堕天使にされたけど天使だったことは事実ですよ。そう言えばあの時は、サタンだと言ってしまったような……」


「眞樹は主席にとって天使だったのですか?」

俺は頷きながら質問をしていた。
あの時と一馬は言った。
俺は屋上のことだと思ったんだ。


「天使? いや、救世主だった。だから未知数だった体外受精を許可した訳です。マリーが居たからそう思ったけど、君を孤独にするためではなかった」

一馬はそう言った。




 ルシファーは明けの明星とまで言われる位、絶世の美形だったらしい。
だから自分を見失ったのかも知れない。


俺はそれは眞樹に通じると思った。
日本一の頭脳の持ち主になったからこそ、俺を抹殺しようとしたのだ。


神に逆らったルシファーに似ていると俺は思った。
尤も俺はそんな偉いヤツでないけどね。


それでも俺は、サタンとルシファーは同一で、天使界を追放されて人間界に送り込まれた堕天使だったと感じた。


眞樹は一体何時俺にあのゲームを遣らせるつもりだったのだろう?
俺が十八歳になるのはクリスマスだから、きっとその後だと思った。

俺が卒業して世に出る前に仕掛けるつもりだったのではないだろうか?


つまり……
やはり眞樹はあの屋上で俺を墜すつもりだったのだろう。

俺は今此処に居られる、奇跡をもたらせた軌跡に感謝していた。