火葬場の扉の前に俺はいた。
柩に入ったら眞樹の体がゆっくりと送られる。

その後で待合室とでも言える和室に案内される。
其処には食事が用意されていた。


でも……
俺はどうにも、喉を通りそうもない。


俺は一人席を外した。

その後をそっと追って来た人がいる。
それは望月一馬だった。


「喬君と色々と話したくて」
望月一馬はそう言った。


参列者全員が、俺と主席の話し合いの場所を演出してくれたからだ。
何よりも、俺を気付ってくれる優しい計らいだったのだ。


こんな機会、滅多にある訳もない。
俺は、みんなに感謝しながら望月一馬主席と向かい合った。


これからの教団の在り方を主席と考えるには本当に良いチャンスだと思った。




 まず有事対策頭脳集団の創立目的を聞いた。

民間の養護施設を作り上げたのは、これ以上宇宙人を作らないくするためだった。
ちゃんとした教育を受けさせ、子供を棄てない親にすること。
そのために塾も作り、予習復習で落ちこぼれを出さないようにする。
得意分野を見つけて、それにみあった教育を受けさせる。

そのために医学にも力を入れたらしい。


何故オカルト教団と呼ばれるようになったのか?
それはやはり宇宙人説と、体験からだったらしい。
人と違った考え方をする者にマスコミは厳しい。

一社が書くと、追々するようだ。


佐伯真実の家族が若林結子との結婚を反対し、所属している有事対策頭脳集団をオカルト教団だと口走ったことに端を発したことは間違いのない事実だったらしいけど。




 確かに一馬が目指したのは善意のボランティアグループではない。

宗教法人でもなかった。


彼は真に、日本の行く末を案じていた。

博士の誘いに乗ったのは、借りを作るためでもなかった。

それは、本物の宇宙人をやっつけるための化学兵器の開発の依頼にあったようだ。

そのために氷室博士教授は、この世に存在しているあらゆる菌を育てていたのだった。


でもそれはマリーと出会う前までのこと。
望月一馬は、氷室博士教授と小松成実の体外受精卵を救世主だと信じてマリア・ローズに移植した。

そしてその卵により産まれた新生児を慈しみながら育てたのだった。