眞樹は、卒業式終了後遺体をケーゲー本部に運ぶように記しておいたのだった。

学校側には卒業記念の品物作りだと称して、ブルーシートで覆うことの許しを得ていたらしい。


頭脳日本一の望月眞樹の卒業記念製作。

それだけで浮き足立っていたのだった。

何しろ、そう言う類いには無縁だった普通の高校が日本一の頭脳の持ち主・望月眞樹の出現によって突然脚光を浴びることになったからだった。


誰も眞樹が何をしようとしているのか知らない。
だから期待していたのだろう。


今日彼処で起こったことは、きっと隠蔽される。
でもそれがベストなのかも知れないと何処かで思っている自分がいた。


担任が俺達の秘密を知ったら……
探して回った屋上に潜んでいたことを知ったら……
きっと自分を責めるだろう。


だから……
卒業式の最中に決行したのだ。




 それは眞樹が主席に宛てた遺言にて判明した事実だった。


眞樹は望月一馬の言う通り、俺に次期主席の座を譲ろうとしていたようだ。


本当のとこは解らない。
もしかしたら、自分が生き残ることも視野に入れていたのかも知れない。


だから俺……
今、生きていることが信じられないんだ。


俺は、眞樹?
なんてことないよな?


あのブルーシートの下にはある仕掛けがしてあったようだ。
確実に死ねるように。


その全てが意味することを考える。


(もしかしたらダイイングメッセージ? でもそれは絶対言ってはいけないことだ)

俺はまだ眞樹の死の真相を理解出来ていなかった。




 有事対策頭脳集団のトップになるべき人物の葬儀としては異例だった。

密葬形式で、参列者は僅かだった。

それは俺とまことの結婚式に出席した人達と、松本君だけだった。


何故なら、有事対策頭脳集団は俺が引き受けることになっているようだったから。


トップシークレット。

眞樹と幹部候補生達の起こした事件を公にしたくなかったからだ。


又オカルト教団として騒がれたくなかったのだ。


望月一馬の心をよんだ時、俺の中で燻り続けていたわだかまりは払拭された。
望月一馬は本当に信頼に価する人だったのだ。