卒業式の最中、眞樹と赤坂奈津美の遺体はひっそりと運び出された。
学校関係者も生徒も、誰も気付かない内にブルーシートで始末されたからだった。


皆が気付いて騒ぎ出す前に全てのことを終了させたのだ。


そのブルーシートは植え込みと校舎の壁の間に敷かれていて、生徒達には見えないようにカモフラージュされていた。


全て眞樹が用意した物だった。
眞樹は本気で死ぬつもりだったのだ。
それとも、俺を抹殺するためだったのかも知れないが……
何れにしても、俺達のどちらかは屋上から墜ちて死ぬ運命だったのだ。


俺が眞樹の携帯で始めたアンビエンスエフェクトは、隠されていた真実を浮かび上がらせた。
それが眞樹の全てを狂わせたのだった。




 勿論担任は俺達のことを探し回っていた。
屋上にだって来たけど、死角になる場所に隠れていたんだ。
だから仕方なく、卒業式の会場へ戻って行ったんだ。


担任は本当に俺達の……
眞樹のことを探していたんだ。
そりゃそうだ。
眞樹は最高優秀生徒として皆の前で表彰させることになっていたからだ。


高校日本一の頭脳を持つ学生を学園の名誉として讃えたかったのだ。
でも諦めたなのか、その後で屋上には来なかった。


あのブルーシートは、眞樹は屋上へ上がる前に堕ちる場所を予測して敷いておいたのだった。

だから式の始まる直前に強行したのだった。
眞樹は本当に死ぬ気だったのだ。




 有事対策頭脳集団の若い幹部候補生達に弄ばれた眞樹の体は、あの血液製剤無しには生きていけなくなっていたのだ。
でももうそれを手に入れることは出来ない。
体が麻薬の禁断症状みたいに震えがきても、どうすることも出来ないのだ。


だから自暴自棄になってしまっていたのだった。


だから最後の賭けに出たのかも知れない。




 でも、どうやらそれも眞樹の意向だったようだ。
俺と眞樹、二人の内で生き残った者が有事対策頭脳集団のトップになる。
眞樹はそう考えていたのだった。


でも本当は自ら死ぬ気だったんだ。
それはあの時の……
俺の手を振りほどいて堕ちて行った眞樹の目が証明していた。

だから微笑んだのだと思った。
あくまでも、望月一馬を守る気だったのだ。


眞樹の頭脳の中にはもう入り込むことは出来ないけど、望月一馬はそれだけ尊敬に価する人だったようだ。